HEMP
ヘンプは、日本では麻薬の一種である大麻としてネガティブなイメージのある植物ですが、実は縄文時代(約1万年前)より日本人の生活に取り入れられてきました。江戸時代から昭和初期までは、重要な植物として栽培され、茎、種、葉、穂、根、全ての部位を無駄なく使用していました。しかしながら、1950年代後半にアメリカによる規制と、生活様式が西洋化したことで需要が激減し、ヘンプ栽培は衰退していきました。
一方で、近年、世界では産業用ヘンプとして法律が整備され、先進国を中心に生産・利用の両面で急速に広まっています。
その一例として、アメリカでは2018年に米国農業改善法によって、ヘンプがマリファナと区別され、全米で合法化されたことをきっかけに作付面積が増え、投資及び商品開発が進み、市場拡大への期待が高まっています。このような世界動向もあり、日本でも2011年に北海道ヘンプ協会が「ヘンプを北海道の基幹作物に」を掲げて活動を開始し、普及啓蒙活動、栽培免許取得支援、先進地視察などに取り組んでいます。
成長過程での環境負荷が少ないヘンプは、アパレル産業において世界では綿の代替品として注目されています。
ヘンプの環境へのポジティブなインパクトとして
①CO₂削減に貢献:
ヘンプの茎1トンあたり約1.63トンのCO₂が吸収されます。これは50年生スギ人工林の吸収量の約3倍に相当します。
②少ない水量で育つ:
ヘンプは、綿花栽培の3分の1の水(1キロあたり約2,040~3,400リットル)で育てることができます。
③無農薬:
ヘンプに含まれる芳香成分(テルペン類、フラボノイド類)に殺虫効果があり、農薬を与えずに育てることができます。
当社では、北海道ヘンプ協会にも加盟し活動の支援を行うだけでなく、ヘンプを使用した素材開発を行い、ヘンプの普及や需要を増やすことで地球環境が改善されることを目指しています。
参考文献:
・James Vosper. The Role of Industrial Hemp in Carbon Farming. GoodEarth Resources PTY Ltd.: NSW, Australia, 2011.
・IPCC第6次評価報告書. IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change))
・Cherrett, N., J. Barret, A. Clemett, Ecological footprint and water analysis of cotton, hemp and polyester. Report prepared for Bio Regional Development Group and WWF Cymru, Stockholm Environmental Institute. 2005.
・Genís Ona et al., The Use of Cannabis sativa L. for Pest Control: From the Ethnobotanical Knowledge to a Systematic Review of Experimental Studies. Cannabis and Cannabinoid Research. 2021.